【ステンレス】酸洗い処理の基礎知識と手順について

Home コラム一覧 【ステンレス】酸洗い処理の基礎知識と手順について

【ステンレス】酸洗い処理の基礎知識と手順について

ステンレス加工において重要な工程「酸洗い処理」とは?手順もご紹介

ステンレスは鉄をベースにクロムやニッケルなどを添加した合金です。表面に形成される薄い不動態被膜によって、錆にくくなっている点が特徴です。

しかし、加工工程においてこの不動態被膜が破壊され、錆が発生しやすくなってしまうことがあります。そこで、ステンレスの表面を綺麗に保ち、錆の発生を抑制するために重要な工程となるのが「酸洗い処理」です。

こちらではステンレス加工における基礎知識として、酸洗い処理の目的や手順をご紹介します。

酸洗い処理の基礎知識

酸洗い処理の基礎知識

ステンレスの加工において非常に重要な工程である酸洗い処理ですが、そもそも酸洗いとはどのような処理なのでしょうか?

こちらでは、酸洗いの定義や目的、ステンレスの表面に生じる不純物について解説することで、酸洗いの重要性についてご紹介します。

酸洗いの定義と目的

酸洗いとは、ステンレスをはじめとした金属の表面に付着した汚れや酸化物を取り除くための処理のことです。表面処理の一種であり、化学洗浄処理方法に分類されます。ステンレスは、加工工程や保管環境など様々な要因によって表面に以下のような様々な不純物が付着してしまいます。

不純物の種類 発生源
溶接時の変色部 溶接
黒皮 焼鈍
水分、塩分
バリ 切断、プレス
微細なキズ 加工、運搬
切削油 加工
手汗、汚れ 加工、運搬

これらの不純物はステンレスの表面を覆い隠してしまうため、本来の光沢や美観を損ねてしまいます。また、不純物が付着したままの状態では塗装やメッキなどの表面処理が均一に行えず、剥がれや腐食の原因となることもあります。さらに、不純物は水分や塩分を吸着しやすく、錆の発生を促進する可能性もあります。

これらの不純物を除去するために、酸洗い処理が必要となります。

酸洗いの重要性について

酸洗いを施す理由としては、以下の点が挙げられます。

金属表面の洗浄

酸洗いにより溶接スケールや焼鈍スケール、もらいサビ、油分などを取り除き、ステンレス本来の輝きを取り戻します。これにより製品の外観品質が向上し、特に見た目が重要視される建築材料、装飾品、家電製品などでは欠かせない処理です。

加工前の下準備

塗装やメッキなどの加工を行う際、ステンレスの表面に不純物が残ると塗料やメッキの密着性が低下するおそれがあります。酸洗いによって表面を清浄化することで塗料やメッキの密着性を向上させ、より高品質な表面処理を実現できます。

不働態被膜の再生

ステンレスは、表面に形成される薄い酸化皮膜(不働態被膜)によって優れた耐食性を示します。しかし、熱や加工によりこの被膜が損なわれることがあります。酸洗いは破壊された不働態被膜を再生し、耐食性を回復させる効果があります。

酸洗いには、硫酸や塩酸や硝フッ酸などの酸性溶液が用いられます。これらの酸は金属表面の不純物と化学反応を起こし、溶解・剥離させることで除去します。

酸洗い処理を行うことで金属表面はクリーンな状態になり、その後の加工処理をスムーズに行うことができます。また、製品の品質向上や寿命延長にも貢献するため、製造現場において欠かせない工程といえるでしょう。

酸洗い処理の手順

酸洗い処理の手順

酸洗い処理は、いくつかの工程を経て行われます。

こちらでは、酸洗い処理の手順をご紹介します。

1.前処理:脱脂工程

酸洗いを行う前に必ず「脱脂」という前処理を行う必要があります。

脱脂工程は、その名のとおりステンレス表面に付着した油脂分を取り除く作業です。油脂分が残ったまま酸洗いを行うと酸が油脂分に阻まれてしまい、表面全体に均一に酸が行き渡らず、酸洗いの効果が低下してしまう可能性があります。

脱脂工程が完了したら水洗を行い、洗浄液や溶剤を洗い流します。水洗が不十分だと洗浄液や溶剤が酸洗い槽に混入し、酸洗いの効果を低下させてしまう可能性があるため注意が必要です。

2.酸洗槽への浸漬

酸洗槽に浸漬する工程では、使用する酸の種類と濃度、そして浸漬時間が重要になります。これらの要素は、ステンレスのグレードや表面の汚れ具合によって適切に調整する必要があります。

酸の種類

酸洗いには塩酸、硫酸、硝フッ酸などが用いられます。それぞれの酸は特性が異なり、処理するステンレスの特性に合わせて選択されます。

濃度

酸の濃度が高すぎると、ステンレス表面を過度に溶かしてしまう可能性があります。逆に、濃度が低すぎると十分な洗浄効果が得られません。

浸漬時間

浸漬時間が長すぎると、ステンレス表面を傷める可能性があります。逆に、浸漬時間が短すぎると汚れが十分に除去されない可能性があります。

最適な酸の種類、濃度、浸漬時間は、経験豊富な技術者によって決定されます。酸洗槽への浸漬はステンレス表面を清浄化するうえで非常に重要な工程ですが、適切な条件で実施しなければステンレスの品質に悪影響を及ぼす可能性もあるため、注意が必要です。

3.水洗工程

酸洗いが完了したら、次は水洗工程に移ります。水洗工程は、酸洗いによって溶解した金属や酸の残留物を完全に取り除くために非常に重要なプロセスです。
水洗工程は、大きく分けて2つの段階で行われます。

1回目

酸洗いでついた酸の除去と、酸の付着によりシミなどを残さないように水洗を行います。

2回目

酸洗い後、高水圧ジェット機を用いて表面に付着した酸や不純物を洗い流します。

3回目

1回目の水洗で洗い流しきれなかった残留物を完全に除去するために、もう一度水洗を行います。

特に2回目の水洗では、高水圧ジェット機を用いることで隙間に入り込んだ残留酸液を徹底的に除去することに注意を払います。3回目の水洗は最終仕上げとして、より高いレベルでステンレス表面の清浄度を確保するために重要な工程です。

水洗工程が不十分だと、残留した酸や不純物が原因で腐食が発生したり、その後の加工工程に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。そのため、水洗工程は時間をかけて丁寧に行うことが重要です。

4.乾燥

酸洗い処理が完了したら、乾燥させる工程に移ります。乾燥が不十分だと再び錆が発生する原因となるため、非常に重要な工程です。乾燥方法には、主に以下の2つの方法があります。

  • 強制乾燥:温風などを当てて強制的に乾燥させる方法
  • 自然乾燥:自然の風や太陽光を利用して乾燥させる方法

どちらの方法を採用するかは、製品の大きさや形状、生産量、コストなどを考慮して決定します。重要なのは、水分が残留しないよう適切な乾燥方法を選択することです。

適切な表面処理を行うことで製品の品質向上と価値創造に貢献!

東陽理化学株式会社は、ステンレスの電解研磨をはじめとする金属表面処理の専門会社です。独自のプロセスでお客様の疑問やお悩みをコンサルティングいたします。ヒアリングを通じてお客様のニーズを深く理解し、持てる処理技術と開発力を惜しみなく注ぎ、求められる目的用途を極限まで追求します。納品まで一貫してサポートすることで、お客様に安心してお任せいただけるサービスを提供しています。

ステンレスを扱うメーカー様や加工会社様の中に、表面処理でお悩みの方はいらっしゃいませんか?

私たちの専門知識と豊富な経験を活かし、お客様の課題解決をサポートいたします。ステンレスの性能向上や新たな可能性の追求など、どのようなご相談でもお待ちしております。

金属表面処理に関するお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。

ステンレスの酸洗いのことなら東陽理化学株式会社

社名 東陽理化学株式会社
本社工場所在地 〒335-0023 埼玉県戸田市本町3丁目6番16号
本社工場電話 048-442-6035(代表)
本社工場ファックス 048-442-6036(代表)
創業 昭和25年4月5日
設立 昭和36年4月3日
営業品目 [金属表面処理技術] 電解研磨・精密電解研磨・化学研磨・酸洗・特殊不動態処理
URL https://www.toyorikagaku.co.jp/